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デッド・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap DES)とは

デッド・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap DES)とは、
を意味します。

直訳は、債務資本交換・債務の株式化と訳されています。内容としては、債務(負債・借入)を資本や株式に交換することです。債務を株式などに変換して資本に組み入れる方法です。財務体質を改善するために用いられる手法の1つと言えます。このデッド・エクイティ・スワップ(DES)により、負債はなくなりバランスシートがスリムになります。
 
金融機関等から、直接的な借入を行っている場合などに返済をするメドがない状況において(返済金がない)、債権者(貸手)に債権放棄を行わせずに処理するための有効な手段と言えます。債権放棄を行うと資産が減少するので、よほどでない限りは行うことは困難です。ただ、このDESであれば、資産が減少することなく返済を受けたことと同様の効果を得られるので、活用しやすい利点があります。

ある会社が、銀行から5000万円の借入をしている場合で考えてみます。
当然、借入金なので利子を付して返済する必要があります。ただし、現金が無ければ当然返済するのは困難です。銀行としても倒産された場合には貸付金を回収することが出来なくなります。そこで、DESでは会社は銀行に返済します(厳密には、返済したことにしている)。この返済したことになっている金額(5000万円)を増資(資本金を増やす)します。これにより現実には一切お金の動きは無いけれど、会社としては返済する義務のある借金が減ります。同時に資本金も増えることになります。

上記のように、債務(借入金)を株式に変換したことになります。実体は、債権を現物出資した形になります。債権者(今回は銀行)は、株主としての立場に変化します。このDESは、債権の時価相当額の範囲でのみ認められます。全てにおいて認められるわけではありません。

▼ デッド・エクイティ・スワップ(DES)のスキーム ▼ 税務上の注意 ▼ 結びにかえて

デッド・エクイティ・スワップ(DES)のスキーム

デッド・エクイティ・スワップ(DES)を行う手法としては2つあります。@新株払込方式と、A現物出資方式です。

新株払込方式

会社が第三者割当増資(新株発行)を行います。この新株発行により払込まれた資金を返済に充当する方法です。借入(デッド)を返済するために新株を発行することになります。新株発行を行う場合には、会社法に定められた手続きを践履する必要があります。公開会社においては、新株発行は取締役会の決定において機動的に行うことが可能です。

もっとも、第三者割当増資の場合は、一般的な価格より低い額で発行されることが多くあります。特に有利な価格において発行する場合には、株主総会において理由を説明することが要求されます。場合によっては、新株発行が差し止められる可能性もあります。発行総数が増加すると、既存の株主の持株比率・経済的利益に保護も考慮しなければなりません。この新株払込方式のスキームを利用する場合は、細心の注意が必要です。

現物出資方式

現物出資方式は、債権者が会社に対して有している債権(貸金債権)を現物出資する方法です。現物出資とは、新株を引受ける場合などに金銭以外の財産を出資することです。通常、新株を引受ける場合は、金銭を払込みます。現物出資は、金銭以外の財産(特に限定なし)を払込むことにより新株を引受けることになります。

現物出資の場合は、金銭と異なり、出資する財産の価値を客観的に評価することが困難です。あまりに過大に評価すれば、他の株主に対して損害を与える危険性があります。そこで、客観的な評価するために裁判所が選任した検査役の検査が必要となります(会社法207条)。

もっとも、出資された財産の客観的評価が比較的行いやすい、会社の株主などを害する危険性が少ない場合まで検査役の検査を要求するのは手続きの煩雑となります。そこで、会社法は一定の場合には、検査役の検査を不要としています。

現物出資財産が会社に対する弁済期の到来した金銭債権であり、かつ、債権金額以下で出資する場合には、検査役の検査が不要となります(会社法207条9項5号)。金銭債権の場合は、価格がはっきりしており、他の株主などを害する危険性が少ないとかんがえられます。

税務上の注意

資本金が増加した場合には、税務負担が増加する可能性もあり、注意が必要です。また、DESを行ったことにより資金がショートする場合もあるので、事前の審査が大切と言えます

結びにかえて

企業ファイナンスにおいては、様々な手法があります。デッド・エクイティ・スワップ(DES)も数ある手法の1つです。新株払込方式、現物出資方式のいずれにおいても会社法の定める手続きを瑕疵なく行う必要があります。慎重に進めなければなりません。また常に債務を株式に変換することが可能ではありません。状況を精査して、DESが行えるか否かを慎重に判断し、実行することが必須といえます。

企業においては、将来の成長戦略を遂行するためには、資金を確保する必要があります。今までは、銀行などの金融機関からの借入を行うことが中心でした。今後は、借入に頼るのみではなく、個々の事情に応じた資金調達のスキームを構築する必要があります。