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エクイティファイナンス(Equity Finance)

エクイティファイナンスとは

エクイティファイナンスとは、エクイティ(Equity)すなわち、新株・新株予約権・新株予約権付社債などの発行により資金調達を行う方法です。企業などが必要な資金を調達する方法としては、大きくわけて直接調達間接調達があります。直接調達とは、不特定多数人(投資する方)から必要な資金を直接集める方法です。間接調達とは、不特定多数人から直接ではなく、金融機関などを介して必要な資金を調達する方法です。

通常、金融機関などから調達した資金(借入)は、金利を附して返還する必要があります。しかし、エクイティによる資金調達は、返還する必要がありません。すなわち、一般的な借入は負債(デッド・Debt)となるのに対して、新株発行・新株予約権付社債などの発行になり、調達した資金は、返還する必要がありません。貸借対照表においては、純資産に該当します。エクイティファイナンスにより調達した場合は、返済期限もなく、負債も増えず、資本が増加する特徴があります。

調達する企業としては、必要な資金調達を行ったにも関わらず、返済する必要がなく、金利の支払いも不要となるため、かなり使い勝手の良い方法です。エクイティファイナンスは、ストラクチャード・ファイナンスの一部を構成します。

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▼ エクイティファイナンスの種類 ▼ エクイティファイナンスの留意点 ▼ 結びにかえて

エクイティファイナンスの種類

エクイティファイナンスといっても、エクイティファイナンスという独特の手法があるわけではありません。手法としてはいくつかの方法があります。これらの方法の総称としてエクイティファイナンスと呼ばれます。以下、代表的な手法とそれぞれの考慮する点について簡単に説明します。

新株の発行

 投資家に対して、新株を発行することで資金調達を行います。新株の発行は、取締役会の決定において行うことが可能です。もっとも、有利な価格で発行する場合は、株主総会において理由を説明する必要があります(会社法199条3項)。特定の第三者に対して新株を割当てる第三者割当増資や、既存の株主に対して割当てる株主割当があります。それぞれメリット・デメリットがあります。

「有利な価格」について一律に定めることはできません。個々の会社の事情により有利か否かについての判断は個々となります。そこで、「有利な価格」とは、発行される新株の公正な価格に比して、有利性が明らかな場合と解されています。有利な価格で発行した場合には、取締役に善管注意義務違反が生じる可能性があります。この善管注意義務の観点からも新株の発行については、慎重な検討と手続きが必要となります。その他、新株を発行する場合には、定めなければならない事項もあります。

新株の発行により、発行総数が増加することになります。公開会社においては、発行可能総数枠も問題を考慮しなければなりません。非公開会社においては、発行可能枠は無いので、特に問題は生じません。また、発行総数が増えると、個々の株主の持株比率が希薄化(Dilution)します。既存の株主の比率・経済的価値についても考慮する必要があります

新株予約権の発行

新株を直ぐに発行しなくても将来において新株を発行した場合に引受けることができる権利(新株予約権)を発行することで資金調達する方法もあります。会社法の定義によれば、「新株予約権とは、会社に対して権利行使することにより、会社の株式の交付を受けることができる権利(会社法2条21)。」とされています。

さらに具体的にいえば、あらかじめ定められた期間に内に、あらかじめ定められた金額を払込むことにより、会社から一定数の株式を受けることができる権利です。この新株予約権は、株式そのものではありません。もっとも潜在的な株式としての性質を有しています。

新株発行と同様に、新株予約権についても、第三者に有利な価格(無償又は低価格での発行)にて発行する場合については、既存の株主の経済的利益について考慮する必要があります。そこで、@金銭等の払い込みをしないで新株予約権を発行する場合、A特に有利な価格において発行する場合には取締役は株主総会において、発行する理由について説明する必要があります(238条3項)。

新株発行の場合と同様に「有利な価格」について一律に判断することはできません。慎重に判断が要求されます。

新株予約権の行使価格が一定の割合で修正することができる条項が付された新株予約権があります。いわゆる権利行使価格修正条項新株予約権(Moving Strike Warrants)です。新株予約権を発行する際に権利行使の価格について定める必要があります。もっとも株価は常に変動することから発行時と権利行使時において開きが生じる可能性があります。このような株価の変動を考慮して、権利行使する価格を修正することになりより実質的な利益・不利益を調整することが可能です。

もっとも常に株価の90%において権利行使ができるとなれば、権利行使する者にとって有利となる可能性があります。すなわち、常に10%の利益が生じることになります。このような権利行使価格修正条項が有利価格での発行に該当するか問題となります。日本証券業協会の「第三者割当増資の指針」においては、10%くらいの幅は有利価格での発行に該当しないとしています。

新株予約権付社債の発行

新株予約権の附いた社債の発行も可能です。この新株予約権付社債は、通常の社債としての性格を有しながら、新株を引き受けることができる権利(オプション)がついています。社債と新株予約権の双方の性質を有しています。新株を引き受ける権利を行使しなければ、社債として利息を得ることができます。この社債について満期には、全額償還する必要があります。新株を引き受けると社債は消滅します(転換社債型新株予約権付社債の場合)。すなわち、会社としては、償還する必要がありません。

さらに、転換価格(新株を引き受ける時の価格)について修正することができる条件が付いた新株予約権付社債もあります。いわゆる転換価格修正条項付転換社債型新株予約権付社債・下方修正条項付転換社債型新株予約権付社債(Moving Strike Convertible Bond・MSCB)と呼ばれています。このような修正条項・下方修正条項が付された場合は、多くの場合10%低い価格で転換することができる条件となっています。

例えば、1株について400円の会社があったとして、このMSCBが発行された場合は、転換価格は、360円に設定されます。すなわち、40円は利益が出る仕組みになっています。株式に転換すると360円の株式が手に入ります。売却すると株価と転換価格の差額が利益となります。逆に株価が350円に下落した場合に360円で転換できても損が発生します。このような下落した場合に備えて、常に株価から10%ディスカウントされた価格において転換することができる条件(修正条項・下方修正条項)が付されます。360円に下落した場合は、324円において転換できます。

このような常に10%の利益が確保されている(下落のリスク回避)ので、他の株主との関係で問題となる指摘もあります。

エクイティファイナンスの留意点

エクイティファイナンスを行う場合は、新株・新株予約権・新株予約権付社債などの発行行うことになります。留意点としては、それぞれ会社法の定める手続きを踏むことが最低限必要となります。特に会社法の定める手続きを看過した場合は、差止められる可能性があります。

また、既存の株主の持株比率・経済的整合性などについて十分に考慮する必要があります。調達した資金についての活用法が不十分であれば、株主から説明が求められたりする可能性もあります。法的見地・経営的見地の双方からしっかりと留意する必要があります。

結びにかえて

企業における資金調達は、エクイティファイナンスだけではありません。借入などを中心としたデッドファイナンスやハイブリッド証券を用いたメザニンファイナンス、資産を活用したアセットファイナンス(資産の証券化)などがあります。個々の事情・状況に応じたベストな方法を選択する必要があります。それぞれのメリットと活用しながら、既存の株主や取引先との関係など総合的に考察を行うことが大切です。

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