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動産・債権を用いる資金調達(ABL)

ABLとは、Asset Based Lendingの略です。Assetは資産を意味します。Basedは、基にする、基準にするという意味です。Lendingは、貸出を意味します。直訳するとABLとは、「資産を基にした貸出」という意味です。経済産業省は、このABLを「企業の事業そのものに着目し、事業に基づくさまざまな資産の価値を見極めて行う貸出」と定義しています。

企業が資金調達を行う場合、担保として不動産が要求されることが殆どです。銀行などの金融機関においても不動産の担保価値を把握して融資を行っていました。もっとも多くの企業において不動産を保有しているとは限りません。また、不動産の担保価値が下落すると新規の融資を受けることが困難となります。

不動産は保有しないけど、売掛債権や商品在庫などの流動資産を保有している企業は多くあります。このような不動産以外の資産(債権・動産など)の価値に着目して(担保として)資金調達を行う手法がABLです。
資産の担保価値に着目することから、アセットファイナンスの一部と言えます。もっともアセットファイナンスにおいては、不特定多数の投資家から資金調達を行うために、SPCや一般社団法人などを介するスキームを用います。このような大掛かりなスキームでは、手続きが煩雑となり、倒産隔離など行う必要があり、多額の資金調達を行わない場合には、手数料が高いなどのデメリットもありました。

そこで、資産の担保価値を利用しつつ、金融機関などに対して融資を得る方法としてスキームを構築することになります。一般的なアセットファイナンスが「企業対不特定多数の投資家」であるのに対して、ABLは「企業対金融機関」の構図となります。このABLは、中堅企業が資金調達を行う方法として向いています。

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特に債権については、ファクタリング(買取り)も行われます。特に金銭債権であれば、ファクタリング会社に対して譲渡することによって早期に現金化する場合もおおくあります。動産などの一定の商品価値を有するモノについてはABLを行うことが多いといえます。

▼ ABLの利用時の留意点 ▼ ABLの具体的なスキーム ▼ 結びにかえて

ABLの利用時の留意点

流動性の高い資産(商品在庫・債権)などを活用する事になるので、資産が担保価値を有していることが重要です。いくら債権を有していても回収の可能性が無ければ担保としての価値はありません。商品在庫であっても不良品であったり、流通性が乏しい場合には担保としての価値はありません。しっかりとした価値を把握することが必要です。担保価値の判断材料として次のような主たる判断ポイントがあります。

売掛債権
期日が90日以内であること
海外に対する債権でないこと
反対債権を持つ先への売掛金でないこと
支払遅延が著しい得意先に対するものでないこと
譲渡禁止特約が附されていないこと
法律で禁止されていないこと
商品在庫
対象動産の評価が可能であること
一定水準以上の換金価値があること
市場や相対で換金処分できること
管理が容易であること
不良在庫でないこと
注品などでないこと

ABLの具体的なスキーム

このABLは、中堅企業が資金調達を行う場合に向いている手法です。具体的なスキームとしてはあまり大掛かりなものではありません。もっとも、発展形として、SPC・一般社団法人を用いるものも可能です。信託の方法を用いる手法もあります。通常は、単一の銀行や金融機関から融資を得ることになりますが、金融機関が複数の金融機関(シンジケート団)を構成して行う手法もあります(シンジケート型ABL)。

下記は、あくまでも一般的なスキームです。これに様々なバリエーションを加える場合もあります。また、複数の要素を加えて構築する場合もあり、個々の実情に応じた変更が可能となります。

結びにかえて

資産(債権・商品在庫)に着目して資金調達を行う手法は、不動産は保有しないが、担保となるモノを保有している企業にとっては新しい資金調達の方法といえます。仕組みとしては、多種多様あり、個々の事情に応じてベストな仕組みを構築することが可能となります。ABLも数ある資金調達の方法の1つにすぎません。企業にとって活動資金を調達することは、将来の成長戦略において不可欠の事項です。銀行などからの借入にたよるのみではなく、自己が保有している資産の価値に着目して、上手く資金調達することが今後の企業発展にとって避けて通れない道といえます。

富山綜合法務事務所は、アセットファイナンス、エクイティファイナンスを始めとするストラクチャードファイナンスを得意しています。個々の実情にベストな資金調達の方法をご提案させて頂いています。事業資金確保・将来の成長に欠かせない資金の確保に関いるご相談は随時お受けしています。